金具にハート柄⁉ 仙台箪笥を彩る「猪目文様」

仙台箪笥の魅力といえば、細やかな装飾が施された飾り金具。飾り金具がたくさんの釘で打ち付けられていることによって、箪笥はより丈夫で長持ちし、さらにインテリアに風格を与えます。
よく見ると、そこにハートのような形が隠れているのをご存じですか?
実はこの形、「猪目(いのめ)」と呼ばれる日本の伝統文様なんです。
古くから神社仏閣や工芸品などに使われてきた意匠で、仙台箪笥にもその美しい形が受け継がれています。
目次
猪目とは? ― ハートに見える日本の伝統文様

「猪目」は、文字どおり猪(いのしし)の目をかたどった文様です。
奈良時代の建築や仏具にも見られ、長い歴史の中で日本各地に広まりました。
形がハートに似ていることから、最近では“ハート模様”と呼ばれることもありますが、
もともとは日本独自の守りの形なのです。
神社やお寺の扉金具、灯籠、欄間の透かし模様などにもこの形が見られ、
仙台箪笥の金具にも、そうした伝統の意匠が息づいています。
猪目に込められた意味 ― 火除けと祈りのかたち
猪目には、「火除け」や「魔除け」の意味が込められています。
猪は火を恐れないとされてきたことから、「火難を防ぐ」「邪気を祓う」文様として使われてきました。
さらに、「目」に通じる形から、「見守る」「災いを防ぐ」という想いも重ねられ、
寺社仏閣や武具、仏具などに多く取り入れられてきました。
仙台箪笥にあしらわれた猪目も、そうした祈りや願いを映すもの。
美しさの中に、暮らしを守る意味がある——それが、この文様の魅力です。
仙台箪笥の金具について
彫金手打金具(ちょうきんてうちかなぐ)


金具職人は自分だけの線を打ち出すために、鏨(タガネ)を自作するところから始めます。技術は代々受け継がれてきましたが 「道具」は引き継ぐことなく自分で作るのが掟。
一打一打の先端には、かなりの圧力と職人の魂が刻み込まれます。繊細かつ大胆な文様が打ち出された彫金金具は、艶やかな漆塗りの箪笥に取り付けると、息をのむ圧倒的な美しさ。
厚さ0.6~1.2ミリの鉄板・銅板・真鍮板等を自分独自の鏨(タガネ)数十本を使い分け、一つ一つ打ち出して行きます。さび止めや、いぶし、塗装の工程を経て豪華な飾り金具に仕上げられます。このため「彫金手打金具」は完成までに半年~一年を要し、貴重で美術的価値も高いことから、愛好者の強い支持を集めています。
欅産業オリジナル鍛造金具(たんぞうかなぐ)




高齢化と後継者不足が著しい彫金手打金具の職人。欅産業ではそれに危機感を抱き、20年ほどの年月をついやして新たな技術開発に成功しました。 職人の手による鍛造の装飾金具から各パーツごとに複数の金型を作製し、金型を何度も取り換えながら鉄板を成形する技術を生み出しました。細部は職人の手作業で修正、調整し、職人の手作りに遜色のない金具をお作りしています。これも国内の極めて精度の高い金型技術と職人技から生まれたものです。
金具の形や文様は、仙台箪笥の印象を決める大切な要素。
一つひとつの猪目に、「家を守り、幸せを願う」という心が宿っています。
神社やお寺でも出会える猪目
実は、猪目は仙台箪笥だけでなく、全国の神社仏閣にも数多く残されています。
社殿の扉金具や灯籠の透かし、建築装飾など、思いがけないところにハート形の穴が。
もし参拝のときにそんな形を見かけたら、それはきっと猪目文様です。
身近な場所に、千年以上前から続く祈りの形があると思うと、少し特別な気持ちになりますね。
まとめ:ハートに見える祈りの形 ― 猪目文様と仙台箪笥




仙台箪笥の金具に刻まれた猪目文様は、
見た目のかわいらしさの中に、火除け・魔除け・幸福祈願の意味を持つ伝統が息づいています。
その形を知ることで、仙台箪笥の奥に込められた職人の想いや祈りが、ぐっと身近に感じられるはず。
使うほどに愛着が深まる伝統工芸品——それが仙台箪笥です。
コラム:西洋のハートと日本の猪目
西洋の「ハートマーク」は愛や友情の象徴。
一方、日本の「猪目」は災厄を避け、幸福を招く守りの文様。
形は似ていても、込められた想いは少し違います。
けれど、どちらも「大切なものを想う心」を形にしたもの。
時代や文化を越えて、人々の暮らしをやさしく見守り続けてきました。
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・【ふるさと納税で仙台箪笥を迎える】利府町の返礼品に、欅産業の伝統工芸品↗
- 監修者
- 永山 寧音

仙台箪笥の奥深い魅力に惹かれて欅産業へ。歴史ある工芸に携われる喜びを胸に、日々の接客やインターネットを通じて、仙台箪笥・仙台仏壇の魅力を多くの方にお届けできるよう、日々心を込めて取り組んでいます。