

吉祥を願う「飾り金具」


仙台箪笥とは
暮らしに物語のある家具を「用の美をたたえた仙台箪笥」
宮城県仙台市を中心に作られてきた伝統的な工芸家具「仙台箪笥」は、堅牢な造りと華麗な装飾が特徴です。
江戸時代中期に発展を遂げ、仙台藩の武士が愛用したことでも知られています。その美しさや機能性から庶民の間でも人気が高まり、明治以降には各家庭へと広まりました。完成までには、箪笥の箱を作る「木地師」、その箱に漆を塗る「塗り師」、そして飾り金具を製作する「金具師」の存在が欠かせません。
それぞれの職人が守り受け継いできた三位一体の技と情熱が宿る、ドラマティックな家具なのです。

飾り金具の始まり
日本刀の刀装具がルーツ仙台箪笥の美しさを際立てる豪華な飾り金具は、武士の甲冑や日本刀の鍔作りの技から発展したといわれています。竜や牡丹、唐獅子など、縁起がよく武士好みの図柄が多いのも特徴で、家の繁栄や武運長久を願う意味が込められています。





彫金手打金具の魅力
職人の手による一点ものの彫刻
仙台箪笥の「彫金手打金具」は、機械による大量生産では再現できない職人技の結晶です。一点一点、職人が一枚の鉄板や銅板を叩きながら模様を刻み、図柄の表情や物語に命を吹き込んでいきます。
一から手作業で生み出される繊細な彫金手打金具は、全て一点もの。そのため、種類や大きさにより完成までには半年~1年を要することもあります。
美術的価値が高く、愛好者からも強く支持されています。
また、自分だけのオリジナルの図柄を製作することが可能であるのも魅力の一つです。実用性と装飾性を兼ね備えた金具は、使い込むほどに風合いに深みが増し、時と共に趣を味わうことができるのも、多くの人を惹きつけてやまないポイントです。



豊かな表情を描き出す
彫金手打金具師
彫金手打金具師小田 俊直氏
大学在学中に彫金技術に魅了され、約20年に渡り修業を重ねた気鋭の彫金作家。近年ほとんど見ることのできない火造りの引き手製作など、伝統技術を忠実に守りながら、温故知新の感性から生まれる新作デザインも柔軟に創作する実力派です。


民藝をこよなく愛する小田さんの工房には、豊かな個性の中に一体感を感じるインテリアや、昔ながらの暮らしの道具が並んでいるのが印象的です。
書斎には図柄の参考になるという資料がずらり。昔ながらの技法を守りながらも、様々な新作を作り出す小田さんのインスピレーションの源泉を感じます。





魂を込めて作り上げる
彫金手打金具ができるまで小田さんが多彩な凹凸で模様を描き出すのに使用するタガネは、200本を超えます。彫金手打金具師は使用する道具の中でも、タガネは自作することが掟。図柄に合わせ使用するタガネを使い分け、ない場合には新しく作り、一打一打に魂を込めて彫金を施します。表と裏から凹凸を打ち出す工程を何度も繰り返すことで模様を描いていきます。

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1
図柄をデザインし、下絵として描き起こします。
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2
厚さ0.6〜1.2ミリほどの鉄板や銅板の上に、のりで下絵を貼り付け、線の上からタガネで大枠を彫っていきます。
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3
下絵を剥がし、より線をくっきり出していく「本彫り」を行います。
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4
鱗や爪などの細かい模様を彫り進め、最後に目や細いラインを仕上げていきます。
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5
次に鉄板や銅板の裏面から槌で叩き出し、ふくよかな凹凸を表現します。
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6
❹❺の工程を繰り返しながら全体のバランスを整え、金具の余白を切り落としヤスリをかけます。
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7
最後に錆止めやいぶし、塗装を経て磨き上げて完成です。
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完成!!
家具を超えた暮らしの相棒
職人と共に伝統を紡ぎ、未来へ
飾り金具は華やかなデザイン性でインテリアに風格をもたらすだけではなく、固定のために多くの釘を打つことでより丈夫な造りになります。強度を補完しながらも、華やかさと品格を添えてくれる仙台箪笥は、世代を超え長い時を共に生きる家具です。
欅産業では江戸時代から続く「彫金手打金具」の技術と、その職人と共に歩みながら時代に合った新しい金具の開発にも力を入れています。仙台箪笥の魅力と共に、職人の手仕事が生み出す金具の輝きと価値をぜひご体感ください。
